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不毛な「保守」「リベラル」論争

自民党の経済政策は、基本的には「大きな政府」路線だ。財政再建などで後手に回っているとの批判は当然だが、経済を拡大させながら社会保障を手厚く用意している。アメリカの政治に合わせれば、保守の共和党ではなくリベラルの民主党のような政策だ。消費税増税の凍結ないし中止を求める政策は、財政規律を重視し自己責任社会を目指す新自由主義的発想といえ、本来は共和党などの保守政党が目指す路線である。もっとも、新自由主義はそもそも「ネオ・リベラル」とも呼ばれていて、はじめはこれを提唱する政治家は「リベラリスト」だった。

憲法議論にしても、改憲を主導する自民党が「保守」で、改正反対を唱える野党が「リベラル」では、意味がまるで逆だ。自民党の保守らしい姿は、女性天皇女系天皇に慎重な姿勢くらいでしか見られない。天皇生前退位に道を開く政治手法などは充分にリベラルだ。

そもそも当たり前のようにメディアは共産党をリベラル勢力の一翼のように捉えているが、共産党をリベラルと呼ぶ国は日本くらいだ。普通は「保守左派」と呼ぶ。各国それぞれに政治対立の事情が違うのだから、保守リベラルの定義付けも一様ではない。小池都知事は「リベラルは排除します」と言ったが、彼女が何を指して「リベラル」を定義していたのかは彼女にしかわからない。

このブログの最初の記事でも述べたが、日本における政治的対立は外交安全保障政策に集約されている。自民党の施政が長く続き、保守リベラル双方の経済政策を自民党が行う稀有な国だからだ。故に、経済や社会保障での論戦は比較的矮小なものにしかならない。与野党の主張の幅は小さくならざるを得ず、野党は外交安保政策での対立軸を大きく主張をする。

日本は平和な先進国だが、西欧先進国と違い常に安保議論が政権選択の最重要項目になる。それはメディアが言うような自民党の政治姿勢への不満だけではなく、大きくは極東アジアという地政学的条件に起因している。手早く言えば「親米路線」か「親アジア路線」かということになる。ここでいうアジアとは、ロシアと中国を指す。冷戦構造は終わったが「グレートゲーム」に決着がついたわけではなく、世界はまだ本当の世界大戦を経験していない。朝鮮半島や日本列島を含む極東アジアは、ウクライナやトルコなどの黒海沿岸や東欧と並ぶ危険な地域なのだ。

日本が戦後の平和を長く享受できたのは、ソ連崩壊後の中国がまだ途上国であったという事情が大きく、グレートゲームの最前線である事実になんら変わりはない。日本は日米同盟を安保の基軸にしており、これを保持する姿勢が現代日本的「保守」である。これに対し急激な中国の成長にあわせ、安保の軸足を中国にも振り分けようとする政治的勢力が伸張する事は自然な流れであり、これが便宜上「リベラル」と呼ばれる。

日本の政治対立軸がさらに複雑なのは、リベラルの側に共産党が一定の勢力で存在し続ける土壌がある事実だ。これは平和的な市民活動との境界線を非常にわかり難くしていて、安保議論をさらに先鋭化させている元凶となっている。親アジア路線での現実的な政策が具体化せず、与党に反対するだけに終始してしまう原因でもある。

今後の長期的な世界のパワーバランスがどうなるかは未知数だが、現状の日本は日米同盟が安保の基軸だ。これを前提に現実的安保議論を深めるためには、エキセントリックな主張に凝り固まる勢力と対峙せざるを得ない。対立すべきなのは保守とリベラルではなく、親米と親アジアでもなく、リアリストとドリーマーだ。

 

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