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米比首脳会談に見える現代的外交術

米政府は、人権団体ではない。当たり前だが。

 

トランプ氏、比大統領とは「素晴らしい関係」 人権問題に言及なし

11/13(月) 19:46配信

AFP=時事

【AFP=時事】東南アジア諸国連合ASEAN)関連首脳会議でフィリピンの首都マニラを訪れているドナルド・トランプDonald Trump米大統領は13日、ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領と会談した。両首脳が冗談を交わす場面もあり、トランプ氏はドゥテルテ氏と「素晴らしい関係」にあると述べた。

【写真】ドゥテルテ氏、トランプ氏をにこやかに歓迎 ラブソングも歌う

 過去に人を殺したとの発言もあるドゥテルテ大統領は、麻薬取り締まりを強硬に推し進めており、警察や自警団とみられる者らにより数千人が殺害されている。人権諸団体はトランプ氏に対し、ドゥテルテ氏のこの「麻薬撲滅戦争」に反対する強い意見を表明してアジア歴訪を締めくくるよう求めていた。

 しかし12日夜から13日朝にかけて複数回顔を合わせた両首脳は同席を楽しむような様子を見せ、昼食時の公式会談ではトランプ氏からドゥテルテ氏への温かい称賛の言葉も聞かれた。

 会談冒頭の短い発言の際、トランプ氏はドゥテルテ氏に向かって「われわれは素晴らしい関係を築いてきた。大変成功している」と語り掛けた。

 さらにトランプ氏は、ドゥテルテ氏が今回の首脳会議を「見事に」取り仕切ったとたたえ、「ここに来て本当に楽しんでいる」と話した。

 ドゥテルテ氏の報道官は会談後、協議は40分以上に及んだこと、またトランプ氏から人権問題への懸念は示されなかったことを明らかにした。【翻訳編集】 AFPBB News

 

 トランプとドゥテルテの共通点は、「政治家」らしさが無いところだろう。そしてもう一つの共通点は、嫌われる人にはとことん嫌われる点だ。型破りなキャラクターと政治手法に眉をひそめる人は数多い。メディアはその最たるものだ。

しかし彼らは少なくとも、政治家として「顔」を使い分ける術は心得ていた。友好的な会談の雰囲気の中でも彼らは恐らく、心から打ち解けてなどいないし、次に会うときは敵かもしれない事を理解している。トランプはフィリピンの国内政治に興味など無く、ドゥテルテもアメリカの大統領支持率など気にしない。利益が共有できればそれでよくて、他は触れないのが彼らにとって最高の交渉なのだ。

それは日本も中国も同じ事だ。トランプの支持率の低さを理由に、彼と関係を深める日本外交を批判するコメンテーターは多い。自民党石破茂氏もそうだ。だがアメリカの大統領が誰であるかはアメリカの国内問題だ。替わったら替わったで新たに関係を作るしかない。今の大統領がトランプである事は、紛れも無い事実なのだ。

利益を共有し、他国の内政干渉はしないのが外交のトレンドになるのかもしれない。国にとって正義は実利であり、正義感は邪魔なのだ。ビジネスマンでありリアリストであるトランプのアジア歴訪は、新時代の外交スタイルとなるだろうか。

 

さて、アジアツアーの最重要課題の一つであった朝鮮半島情勢を、新時代の外交問題として関係国はどう乗り切るのか。日本・アメリカ・中国・ロシアにとって、共有できる朝鮮半島の「利益」は何か。それはおそらく「緊張の固定」だろう。

平和とは緊張が無くなる事ではなく、緊張が固定されて安定することだ。互いの陣営にとって、緊張の不安定化こそがリスクの高まる不安要素である。朝鮮半島の北側に、中露の勢力圏としての北朝鮮があることは、日米にとっても利益なのだ。日米中露の首脳なら朝鮮半島の統一など望まないし、それを望むような政治家は首脳に向いていない。これが「コリアパッシング」の正体だ。

北朝鮮の存在が日米の利益であるなら、両陣営の緊張バランスを乱す金正恩は全ての関係国にとって不安要素だ。かといって彼を取り除き、韓国のようなアメリカの衛星国家を立ち上げるのは愚の骨頂である。東アジア周辺は朝鮮半島の分断と緊張によってバランスを保っている。韓国と北朝鮮と言うクッションがあるから、日米と中露は平和でいられる。北朝鮮があるから日本は平和なのだ。

おそらく非公式の首脳同士の会談では、軍事オプションの「その後」についてが最重要テーマだったはずだ。北朝鮮の存在は必須だが、指導者が金一族である必要は無い。彼を取り除いた上で、中露の納得の上でどのように統治するか。全ての絵が描けているのなら圧力は効果を更に増し、非軍事解決が見えてくるかもしれない。

 

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